手からうまれるカタチ
2014/7/1(火) ~ 9/4(木)
会 期: 2014年7月1日(火) - 9月4日 (木) 最終日は15:00まで展示室: 2F 第3展示室作品数: 約64点展示協力: 天池合繊株式会社
陶磁器デザイナー・田上知之介さんの作品を紹介する企画展です。アイディアスケッチのような紙の上での作業をほとんど行わず、眼と手で思考し、手で探りながら制作していく過程を紹介するとともに、日常生活で使われるモノとはどのようなものなのかを一緒に再考する機会となればと思います。
併せて、石膏型成形技術の中で最も一般的に用いられている「排泥鋳込み成形」の制作工程についても詳しく紹介するとともに、図面やエスキース、石膏型なども併せて展示しています。手仕事からうまれた美しい作品をゆっくりとご覧下さい。
<出展者紹介>
田上知之介 (TAGAMI Tomonosuke)
1974熊本県生まれ1999愛知県立芸術大学デザイン・工芸科 陶磁専攻 卒業2009筑波大学大学院人間総合科学研究科芸術専攻プロダクトデザイン領域 修了<Awards> 1998第5回国際陶磁器展美濃 陶磁器デザイン部門 入選1999日本デザインコミッティー・デザインフォーラム1999 入選2000日本クラフト展('00/'01/'02/'04 入選)
工芸都市高岡クラフトコンペティション('00/'02)2005第7回国際陶磁器展美濃 陶磁器デザイン部門、 カティ・トゥオミネン・ニーットゥラ賞
工芸都市高岡クラフトコンペティション、伊藤隆道賞2007パブリックコレクション(World Ceramic Exposition Foundation)2008第55回日本デザイン学会研究発表大会,グッドプレゼンテーション賞
<出展者からのメッセージ・田上知之介>
モノのデザインに取り組む時、頭に描いていたイメージは原寸大の石膏モデルを削り出すことから始める。イメージを具現化していく作業において、アイデアスケッチのようなペーパーワークはあまりやらない。削り出した石膏モデルを眺め、手で触り、「まだ少し違う。ピンとこない。」などと思いながら、何度も試行錯誤していると、ある時「ココ!」というポイントと出会う。眼と手で思考しながら探し当てたそれを、ペーパーワークから得られたことがない。未熟さ故だとも思うが、陶磁器デザインは手仕事から生まれるカタチなのだと考えている。
この企画展に並べられた作品は、そのようにして必死に創り出してきた作品の一部であるが、最も新しいものでも今から約9年前の作品になる。こうしてこれまでの作品を展示する機会を頂いたことで、現代の生活の中で本当に必要とされるデザインになっていたのかどうかを再考する機会となり、大変有り難く思っている。
最近は、毎日使う何でもないコップや、街の小さな個人商店、田舎の風景、農業や漁業に従事している人など、素朴で普遍的な姿で存在しているモノやコト、人に興味がある。
何気ないけれども、力強さとたくましさを備えていて美しいと思う。
一方で、人間の生活にとても大切なそれらが、急速な社会変化の中で部分的にではあるが、徐々に失われつつあると感じている。
陶磁器をはじめとして、日本の地場産業も同じ状況にある。そうした中で、陶磁器デザイナーとして取り組んだ仕事の質が、「個」で完結するようなモノで終止しているのならばとても虚しい。
だからこそ、モノを取り巻く社会や人、仕組みに目を向けたデザインに挑んでいくことを、これからのテーマとしたい。
そのような中に、ちょっとワクワクするような陶磁器デザインの新しい未来があると考えている。