木の幾何学

- 会 期 :
- 2013年2月1日(金)- 2013年3月27日(水) (最終日は15:00まで。)
- 展示室 :
- 1F エントランスホール展示スペース、2F 第4展示室
- 作品数 :
- 約75点
- 出展者 :
- 一花俊一、遠藤 毅、岡野 繁、庄田正従、立川美治、多村正則、広崎和雄、松井裕志、 松井良雄 (あいうえお順)
以前は、引き戸や欄間、衝立など、精緻な組子が日本家屋のあちこちに使われていました。
このような細工は建具職人により作られてきましたが、生活の西欧化に伴い、引き戸や欄間が消え、和室より洋室が多くなった昨今、組子の技術や技法を生かせる場がなくなりつつあります。組子がどのようなものかを知っている世代も減りつつあり、このままではせっかくの技術が人知れず埋もれてしまう恐れがあります。
組子の歴史、使用される木、道具の説明、工程、組み方のサンプルなどを通して、どのように組子を用いた作品が作られていくのかを紹介すると同時に、伝統的な幾何学模様の作品と合わせて、抽象的なデザインや風景などを写した近年の作品も展示しています。
これにより、組子の世界でも現代に合わせた作品が作られつつあることを知って頂きたいと思います。どうか、組子の素晴らしさを工芸館で再発見して下さい。
本企画展は1階と2階に分かれて展示されています。
1階:組子に使われる木材や道具、様々なデザインパターンを作品と共に紹介します。
2階:様々な組子の作品を紹介します。
<出展者からのメッセージ>
私たちの身の回りの日用品は今やそのほとんどがプラスチックや金属に取って代わられました。
かつては、爪楊枝から家屋や橋梁までもそのほとんどが木製で、木は実用品の材料として我々の生活には欠かせないものでした。やがて生活に余裕が出てくると木工技術の発達と相まって装飾的な部分にも木が使われ出したと考えられます。
その手法の一つが障子の桟に見られる「組子」(くみこ)と呼ばれる細い木材を幾何学的に組みあげる技法です。もともとは 障子紙や襖紙(ふすまがみ)を張るための骨組みに過ぎませんでしたが、色々な組み方を開発し、長い年月をかけ装飾品としての価値を高めていきました。
この企画展ではここ金沢、ひいては石川県下で組子細工を手がける作家や職人の作品を集めました。城下町や神社仏閣、商家の多い土地柄で伝承開発されてきた組子の技をご覧下さい。同じ物を作る場合でも作り手によって使う工具や手順が違います。
私たちの生活の中に組子細工を身近に置いて技の伝承が末永く続くことを切に願います。手にとって体験できる部材も用意しました。ぜひここで組子の良さ、おもしろさを発見して下さい。
<出展者プロフィール>(あいうえお順)
◆一花俊一 (IKKA Toshikazu)
- 1936年
- 石川県七尾市(旧田鶴浜町)生まれ
- 1954年
- 建具職に従事
- 一花建具店代表。若くから県外の商圏に見聞を持って田鶴浜建具の技の発展に貢献する 田鶴浜建具の重鎮。この地区の特徴である重厚なカシュー塗装でもエキスパート。
組子を活用した新しい商品開発にも積極的に努めている。
◆遠藤 毅(ENDO Takeshi)
- 1959年
- 石川県七尾市(旧田鶴浜町)生まれ
- 1980年
- 建具職に従事
- 建具の遠藤代表。県内で唯一、全国建具展示会での最高賞「内閣総理大臣賞」を究めた
その技で、古民家、寺の建具修復等、また、組子行灯や衝立でも緻密な技を披露してい る。近年では輪島塗とのコラボレーションも手掛け話題となった。
(受賞歴)
- 1988年
- 第1回建具フォーラム展示会 石川県知事賞
- 1989年
- 第2回建具フォーラム展示会 石川県知事賞
- 1991年
- 全国建具展示会・上尾市長賞
- 1992年
- 全国建具展示会・大野市長賞
- 1993-95年
- 全国建具展示会3年連続労働大臣賞
- 1996年
- 全国建具展示会・技能名工賞
- 1997年
- 全国建具展示会・労働大臣賞
卓越技能者労働大臣賞(現代の名工) - 1999年
- 全国建具展示会・内閣総理大臣賞
- 2000年
- 全国建具展示会・林野庁長官賞
◆岡野 繁 (OKANO Shigeru)
- 1955年
- 石川県七尾市生まれ
- 1970年
- 多村建具製作所に就職
- 1985年
- 独立し、岡野建具工芸を設立
- 1994年
- TV時代劇「水戸黄門」にて組子の実演
- 1995年
- 紀宮様が田鶴浜建具工業協同組合にご来館になられた際、組子の実演を行う
(受賞歴)
- 1997年
- 全国建具展示会・群馬県技能士連合会会長賞
- 2000年
- 全国建具展示会・愛知県市長会会長賞
- 2002年
- 全国建具展示会・全国技能士連合会会長賞
◆庄田正従 (SHODA Masatsugu)
- 1946年
- 石川県金沢市生まれ
- 1965年
- 建具職に従事
- 1999年
- 金沢職人大学校建具科講師に就任
- 現在は、建具師として活躍しつつ、石川県職人大学校建具科の講師も務めている。
(受賞歴)
- 2003年
- 全国建具展示会・滋賀県知事賞
- 2005年
- 卓越した技能者(現代の名工)表彰
- 2007年
- 全国建具展示会・富山県職業能力開発協会会長賞事
- 2009年
- 全国建具展示会・熱海商工外偽書会長賞
- 2011年
- 全国建具展示会・岐阜県山形市長賞
◆立川美治(TATSUKAWA Yoshiharu)
- 1962年
- 石川県七尾市(旧田鶴浜町)生まれ
- 1983年
- 建具職に従事
- 立川建具代表。機械工学を学んだその足で家業の建具屋に転進。障子専門職人であった
が、近年になって設計士やデザイナーが好む曲線や斜め組子の障子や格子、ガラス戸を
手掛ける。コースターや写真立ての製作も多い。
(受賞歴)
- 1988年
- 第1回建具フォーラム展示会 田鶴浜町長賞
- 1989年
- 第2回建具フォーラム展示会 商工会長賞
石川の技能祭り 優秀賞4回
◆多村正則 (TAMURA Masanori)
平成元年、専門学校の建築デザイン科を卒業し家業を継ぐために多村建具製作所に就職。
- 2002年
- 木製建具の1級技能士取得
- 2009年
- 自社開発商品の影絵障子で石川ブランドの認定を取得
(受賞歴)
- 1999年
- 全国建具展示大会に入賞
- 2011年
- 全国建具展示大会に入賞
- 2012年
- 七尾市技能奨励賞
◆広崎和雄 (HIROSAKI Kazuo)
- 1973年
- 石川県小松市生まれ
- 1995年
- 広崎建具で建具の仕事に携わる
小松建具組合青年部に加入 - 2002-2006年
- 小松建具組合青年部青年部長を務める
◆松井裕志 (MATSUI Yuuji)
- 1966年
- 石川県河北郡七塚町生まれ
- 1984年
- 金沢高等技術学校卒業後、建具修行に入る
- 1998年
- 国家検定建具製作一級技能士資格取得
- 2002年
- 灰外達夫氏に師事
(受賞歴)
- 1999年
- 全国建具展・労働大臣賞
- 2002年
- 全国建具展示会・東北ブロック協会長賞
- 2005年
- 第52回日本伝統工芸展入選
- 2002年から2012年まで
- 石川の伝統工芸展連続入選
- 2002年から2012年まで
- 現代美術展連続入選
- 2007、2009、2011年
- 木竹展入選
◆松井良雄 (MATSUI Yoshio)
1937年 石川県金沢市生まれ
国家検定1級建具技能士。数少ない金沢建具継承者として石川県より認定されている。
21歳の時、「松井建具」創業者・松井仁作より家業を引き継ぐ。現在は建具の他、オーダー家具、
木工品、茶道具などを製造販売している。77歳ながら現役で、日々新しいモノ作りに励んでいる。
(受賞歴)
- 1999年
- 全国建具展示会・労働大臣賞
- 2002年
- 全国建具展示会・東北ブロック協会長賞
- 2005年
- 石川県技能顕功賞
- 石川県伝統産業金沢建具優秀技術継承者と認定される
- 2007年
- 金沢城兼六園大茶会「隅丸筤盆」入選
- 2008年
- 現代美術展「桑造挽曲茶櫃」 入選
- 2009年
- 現代美術展「桑造二段卓」 入選
金沢城兼六園大茶会「神代栗造松皮風風炉先」入選
「神代栗造櫛型風炉先」奨励賞

◆ 併催イベント
「組子の基本技法を使って作るコースターと鍋敷き」ワークショップ
本企画展出展の建具師さんに組子細工を教えてもらう絶好のチャンスです。コースターや鍋敷きの製作を通して、組子の楽しさと難しさをちょっぴり味わってみて下さい。- 日 時:
- 3月17日(日) 13:30-15:30
上記期間内でご都合の良い時間にご参加ください。
(1つの作品を組むのにかかる時間はおよそ20分です。) - 場 所:
- 工芸館1F
- 講 師:
- 出展者建具師の皆さん
- 参加費:
- コースター ¥1,000(材料費)/ 鍋敷き ¥1,500(材料費)
- 予 約:
- 不要です。直接工芸館へお越し下さい。

左:コースターのサンプルです。 右:組子のUSB。ショップで販売中。
2013.03.27 Traditional Art & Craft of Ishikawa